チーム医療への取り組み(2015年度)

本校におけるチーム医療教育

臨床・看護・療法・スポーツ・東洋医学・医療情報・福祉の7分野、昼・夜 計24学科という複合的学科編成を誇る大阪医専。 このスケールメリットを生かし、「チーム医療」の時代に対応した実践教育を展開しています。
入学時からチーム医療教育への取り組みがスタート。 学科を超えた職種の相互理解を図る授業を通年開講し、1年次の終わりには、学生が主体的に問題を発見し、答えを見出す「チーム医療概論・各論」を実施。
そして、2年次の「チーム医療症例演習」、最高学年の「卒業研究発表会(ISEN 発表会)」と、卒業まで一貫して他職種とのコミュニケーション、コラボレーションを実践する機会を設けています。

チーム医療症例演習


2015チーム医療症例演習 最優秀チーム

【実施期間】

2016年2月8日(月)~20日(土):チーム別事前学習・プレゼン資料作成
2月19日(金):プレゼンテーション予選・結果発表
2月20日(土):プレゼンテーション決勝・結果発表(大阪医専マルチホール)

【対象学科】

救急救命学科/臨床工学学科/高度専門看護学科/実践看護学科/アスレティックトレーナー学科/診療情報管理学科/理学療法学科/作業療法学科鍼灸学科/柔道整復学科(各学科の昼間部2年生)

プレゼン発表会(決勝)までの
主な流れ

日 程2/8(月)~2/12(木)2/13(金)2/15(月)~2/18(木)2/19(金)2/20(土)
取組み●全体オリエン(本取組みについて説明・症例紹介など)
●災害レポートの作成
●役割分担の決定
●プレゼン資料の作成開始 ほか
進捗報告会プレゼン資料の作成
(まとめ)
プレゼン発表会(予選)プレゼン発表会(決勝)

多様な能力を同時に磨きあげる学び方

PBL というアクティブな学び

「チーム医療症例演習」では、「PBL〈Problem Based Learning:問題立脚型〉チュートリアル方式」という学習法を導入しています。少人数環境で、進行をサポートするチューター(教官)が学生を臨床的 推論に即した思考過程の中に立たせ、知識の修得・統合・構築・応用を同時並行的に図るものです。

このPBL によって
(1)「問題解決能力と自己計画学習」
(2)「グループワーク、チームワーク能力」
(3)「患者さんを取り巻く問題・社会医学的問題の洞察力」
(4)「グループワークにおける自己表現・自己評価能力」
(5)「科学的根拠にもとづいた論理思考力」
(6)「レポート作成能力およびプレゼンテーション能力」
といった包括的なスキルの修得をめざしています。

筋書き通りにはいかない、問題に取り組む

テーマは「教えるのではない!共に学ぶのだ!」

「チーム医療症例演習」では、教官が答えや考え方を誘導していくことはありません。

実際、模範的な解答は存在せず、教官自身も答えがわからない。だから、「教えるのではない!共に学ぶのだ!」というのがチーム医療症例演習」の一貫したテーマなのです。

現場で問題が起きたとき、一般的な正解のあるほうが実際には少ないのです。あるいは答えが複数あって、その判断を瞬時にしなければならないコースも多々あります。この演習は、そうした臨床現場で必ず突き当たる課題に備える機会にもなります。

オリジナルの症例(ストーリー)を通じて、「チーム医療」のあり方を探る

症例を読み込む力も問われた今年度の演習

今年度の症例は、ある人物の脳梗塞の発症から救急搬送、手術、治療、リハビリテーションまでの約1年半をストーリー仕立てにしたもの。患者さんである主人公をはじめ、家族の人物像も詳細に描かれており、非常に問題の多い患者さんと家族という設定になっています。

主人公の男性は満64歳。元ラグビー日本代表というスポーツマンですが、日頃から暴飲暴食が目立ちます。現在もトレーニングを続けていて給与はトレーニング費や選手仲間との社交につぎ込み、家計は無視。当然家族との関係もよくありません。このように自分勝手で、治療やリハビリテーションでもわがままな態度で周囲に迷惑をかけます。しかしリハビリのスタッフに一喝されたことを機に少しずつ態度が変わり、最後は麻痺が残ることも受入れて、障がい者スポーツとして水泳にチャレンジすることを決意します。

学生たちはこの約7,500文字に及ぶ症例(ストーリー)を読み込んで、どのように「チーム医療」として支援を展開していくのか、自分たちで議論し考えなければなりません。

「症例をしっかりと読み込んでいくことでやるべきことが見えてくる構造になっています。その中で、自分の職種はどこに組み込まれるべきか、なおかつ職種同士がどう連携するのか、それを発見していくことが演習の要です。」と症例を担当した教官は話します。患者さんや家族の状況に沿って「チーム医療」の形をつくっていくことが重要になりますが、それを促す工夫も盛り込まれています。

また、演習を通じて知識面での成長も促進されます。チーム内で意思疎通するためには、他学科の専門用語をお互いに学ぶ必要があるからです。「他学科の用語を数多く覚えることも大切な点」と教官。「自分の専門外の知識は引き出しを増やし、患者さんや家族の信頼にもつながります。演習後は各学科とも専門の勉強に戻りますが、将来現場へ出から必ず他職種の知識も求められます。今回の演習で体験したことを思い出してほしい」と「チーム医療症例演習」の成果は、卒業後も生き続けるのです。

例年、ハイレベルなプレゼンを展開する最終日

最優秀賞・優秀賞チーム、表彰授与式の様子

審査結果

最終日は前日の予選を勝ち抜いた6チームのプレゼンテーションが行われました。持ち時間は各15分。午前中いっぱいかけて6チームの発表と質疑応答が滞りなく終了。どのチームもレベルが高く難しい審査となりました。

濵岡校長は「皆さんパーフェクトなプレゼンでした。症例の中の要点をちゃんと読み取って発表に反映できていました」とコメントしています。

最優秀賞受賞 チームインタビュー

他学科とのつながりを実感できた2週間の演習

2週間の演習を「最初から最後まで楽しくできた」という最優秀賞チーム。それでも出だしは「この症例を読んで、最初は何をすればいいのか全然わかりませんでした」と苦心したようです。その状況を打開したのが議論。自分ならこうするといった意見を出し合うことで問題点を整理し、職種間連携の形を築いていきました。

この症例の文中には主人公や家族、医師らの1人称のコメントが随所に出てきます。たとえば患者さんが集中治療室に入院した後、患者さんの妻が「延命治療は一切不要です。最低限の治療で結構」と医師に告げる場面があります。こうした言葉を額面通り受け取るのではなく、言葉の背後にあるものを読み取って行動することもこのチームの方針でした。

この演習で多くの人が経験する作業に、プレゼンテーション資料の絞り込みがあります。このチームも例外ではなく、ひとまず仕上げたパワーポイントのスライド数は40枚。実際のプレゼンで使用したパワーポイントが25枚ですから、明らかに多すぎました。作成した発表資料を削っていくことは想像以上にタフな作業です。しかし「スライドの絞り込みを通じて15分で何を伝えるべきか、核心部分について考えることにつながりました。削っていくことでプレゼンの中身がわかりやすくなっていった」とプレゼンテーションの要点も学びました。

発表では15分のプレゼンに加えて、7分間の質疑応答時間が設けられています。F6チームの抜かりない点は、質疑応答のクオリティにも磨きをかけたことです。想定される質問を考え、事前に下調べをして深い回答ができる準備をして臨みました。実際想定通りの質問があり、こうした丹念な取り組みが優勝につながりました。

この2週間で得たことを尋ねると「医療従事者ではなく患者中心の治療過程の実践について学んだ」「1人の対象者にこれだけのスタッフが関わっていることを知り、チーム医療のイメージが具体的になった」「他学科の専門用語が最初はわかりませんでしたが、理解するとすごくつながれる。この演習でしか学べなかったことです」など多くの成果を実感できたようでした。


濵岡校長から学生へのメッセージ

「チーム医療症例演習」の取り組みは今年度で8年目を迎え、運営ノウハウも年々進化を遂げていると感じています。とくに今年度の症例は、医学の専門家の目から見ても実によくできた内容で、ストーリーの中にいくつもの周到な仕掛けが盛り込まれていました。

決勝に進んだチームの発表を聞いていると、その意図をしっかりと読み取っていました。プレゼンの素晴らしさとともに私が注目したのが質疑応答です。すべてのチームの発表後、盛んに質疑応答が展開されました。わからないことをそのままにしない姿勢は、これからも大切にしてほしいと思います。

本校学生のプレゼンテーション力の高さには毎年、感心させられるのですが、プレゼンテーションは医療人にとって不可欠な資質なのです。患者さんや家族に自分の考えを説明し納得していただくことはまさにプレゼンテーションそのものです。また、対人援助職であるコ-メディカルは信頼関係が第一ですが、それをつくるのは言葉の力です。そしてプレゼンテーション力に加えて、コミュニケーション力とコラボレーション力も極めて重要な素養です。「チーム医療症例演習」は、それらの力を同時に磨くことのできる機会と位置づけています。


レポート 卒業研究発表(ISEN発表会)

卒業研究の成果を共有する
「チーム医療教育」の集大成

学問的な見識を広げ、将来の連携の素養を磨く

各学科で卒業研究を実施し、そこで選ばれたチーム・個人が口頭発表もしくがポスター発表を行う「卒業研究発表会(ISEN発表会)」。
本校では卒業研究もチーム医療教育の一環と考えます。専門と啓蒙を両立させた研究発表を通じて、学科の枠を越えて相互に学問的な見識を広げ、将来現場で連携していく素養を築くのがこの発表会の狙いです。

合計40演題という、大規模な知的交流

2015年度は、マルチホールで実施された「口頭発表」8演題と、「ポスター発表」32演題の合計40演題という本校ならではのスケールで実施。
ポスター発表は、一般の学会と同様に研究内容を記述した大版の用紙を掲示。ポスター前に待機している発表者は、クラスメート・教官に対して直接説明を行いました。

当日は全員、スーツを着用。この日を社会人・医療人の第一歩と位置つけています。

2015年度・プレゼン内容(口頭発表のみ)

発表学科演題
高度看護保健学科終末期の患者に与える心理的影響
実践看護学科授乳行動に不安を持つ初妊婦への自己
理学療法学科右殿部軟部腫瘍により歩行障がいを呈した症例
言語聴覚学科特発性正常圧水頭症により、高次脳障がいを呈した症例
視能療法学科他覚的屈折検査における測定困難な例と測定誤差に関する検討
診療情報管理学科診療情報管理について~日本とアメリカの違い~
介護福祉学科個人ストレングスに着目した「その人らしさ」への追及
精神保健福祉学科精神保健福祉士の専門性と役割

その他年度のチーム医療レポート

2016年度  2014年度  2013年度 

チーム医療について

   

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