チーム医療への取り組み

本学におけるチーム医療教育

臨床・看護・リハビリ・スポーツ・東洋医学・福祉分野の複合的学科編成を誇る大阪医専。 このスケールメリットを生かし、「チーム医療」の時代に対応した実践教育を展開しています。
入学時からチーム医療教育への取り組みがスタート。 学科を超えた職種の相互理解を図る授業を通年開講し、1年次の終わりには、学生が主体的に問題を発見し、答えを見出す「チーム医療概論・各論」を実施。
そして、2年次の「チーム医療症例演習」、最高学年の「卒業研究発表会(ISEN 発表会)」と、卒業まで一貫して他職種とのコミュニケーション、コラボレーションを実践する機会を設けています。

チーム医療症例演習


チーム医療症例演習 最優秀チーム

日本最大級の規模の「チーム医療教育」を展開

臨床・看護・療法・スポーツ健康・東洋医学・医療情報・福祉の7分野、昼間・夜間計20学科という複合的学科編成を誇る大阪医専。このスケールメリットを生かし、日本最大級の規模で「チーム医療」を展開。時代に対応した実践教育を展開しています。
チーム医療教育の流れ
「チーム医療」教育は入学時から始まります。学科を超えた職種の相互理解を図る授業を通年開講し、1年次の学年末には「アクティブラーニング」で学科横断のチームを組み研究発表を実施。そして2年次の「チーム医療症例演習」、最高学年の「ISEN 発表会」、さらに年次に関係なく他学科の専門科目を受講する「アドバンスセミナー」を開講。卒業まで一貫して他職種とのコミュニケーション、コラボレーションを実践する機会を設けています。
なかでも「チーム医療症例演習」は、本学のチーム医療教育の代表的な取り組みで、様々な学科の学生が1 つのチームを形成し、与えられた症例の問題解決に挑む演習です。各職種(学科)の専門性を相互認識し、「チーム医療」を疑似体験することで、問題解決力、チームワーク、レポート作成力、プレゼンテーション力といった多様な能力を修得します。

<Report>チーム医療症例演習(一例)

【実施期間】

2月9日(木)〜18日(土):チーム別事前学習・プレゼン資料作成
2月17日(金):プレゼンテーション予選・結果発表
2月18日(土):プレゼンテーション決勝・結果発表(大阪医専マルチホール)

【対象学科】

救急救命学科/高度臨床工学学科/高度看護保健学科/実践看護学科Ⅰ/高度理学療法学科/理学療法学科/高度作業療法学科/作業療法学科/鍼灸学科/柔道整復学科(各学科の昼間部2年生)

多様な能力を同時に磨きあげる学び方

PBL<Problem-Based Learning>
というアクティブな学び

「チーム医療症例演習」では、「PBL<Problem Based Learning:問題立脚型>チュートリアル方式」という学習法を導入しています。少人数環境のもと、学生の自律的な学習をサポートするチューター(教官)が、臨床的推論に即した思考過程に学生を立たせ、知識の修得・統合・構築・応用を同時並行的に図るもので、このPBL によって、
(1)「問題解決能力と自己計画学習」
(2)「グループワーク、チームワーク能力」
(3)「患者さんを取り巻く問題・社会医学的問題の洞察力」
(4)「グループワークにおける自己表現・自己評価能力」
(5)「科学的根拠にもとづいた論理思考力」
(6)「レポート作成能力およびプレゼンテーション能力」
という包括的なスキルの修得を図ります。

筋書き通りにはいかない、問題に取り組む

「教えるのではない!共に学ぶのだ!」

「チーム医療症例演習」では、教官が答えや考え方を誘導していくことはありません。実際、今回の症例である災害時の医療などの局面では、模範的な解答は存在せず、教官自身も答えがわからない。だから、「教えるのではない!共に学ぶのだ!」というのがチーム医療症例演習」の一貫したテーマです。
事実、医療現場では平時でも、一般的な正解のあるほうが実際には少ないもの。あるいは答えが複数あって、その判断を瞬時にしなければならないケースも多々あります。この演習は、そうした臨床現場で必ず突き当たる課題に備える機会にもなります。

プレゼン発表会(決勝)までの主な流れ(一例)

日 程2/9(木)~
2/13(月)
2/14(火)2/15(水)~
2/16(木)
2/17(金)2/18(土)
取組み●全体オリエン
●役割分担の決定
●症例読み込み
●グループ活動計画
●課題討議
●発表内容・方法討議
●プレゼン資料の作成開始 ほか
進捗報告会プレゼン資料の作成
(まとめ)
※作業終了
プレゼン発表会
(予選)
※決勝進出チームはプレゼン準備
プレゼン発表会
(決勝)

テーマは『災害医療』。被災者の治療・ケアを半年間に渡りチームで行うには?

医療とその人らしさを両立させる関わりを考える

テーマは「災害医療」。これまでに何度か取り組んできたテーマですが、熊本地震や鳥取県中部地震の発生を受け、いずれ医療人となる学生たちに改めて防災意識を持ってほしいと考えました。
被災者(患者さん)の想定症例は3 ケース用意。学生たちはここより1 つ選択し、災害発生~半年まで段階ごとに必要な治療方法・ケアの仕方についてチームで考察していきます。

被災者(患者)の想定症例

【ケース(1)】69歳・男性。
震災後の受傷は頭部外傷。慢性閉塞肺疾患の既往歴がある。回復後の希望は余暇を楽しむこと。

【ケース(2)】20歳・女性。
震災後の受傷は急性呼吸窮迫症候群。脊髄損傷(L4:短下肢装具、松葉杖が必要)の既往歴がある。回復後の希望は職場復帰。

【ケース(3)】65歳・女性。
震災後の受傷はクラッシュ症候群・ねんざ。パーキンソン症の既往歴がある。回復後の希望は余暇を楽しむこと。

災害発生~半年間までの段階

いずれのケースも患者さんについては職業(退職者は前職)、家族構成、趣味や家庭内での役割など詳細な人物像が設定されています。それは、患者さんのバックグラウンドを知ることなしに医療はできないことに加え、「疾患ではなく人間をみる」という学生にとっても当然の前提があるからです。各チームでメンバーの学科構成などを考慮して上記3つからケースを選択。他学科(職種)の専門性を相互に学び合い、半年間にわたり切れ目のないチーム連携と、震災という特殊な環境下で柔軟な対応を意識して演習に臨みました。

説得力あふれるプレゼンテーション

演習のポイントはEBM とNBM をおさえること(下表参照)。EBM とはEvidence-Based Medicine の略で、「根拠に基づく医療」という原則です。医学的な知識を活かし、専門性を発揮することが求められる場面で、とくに救急搬送から急性期にかけての命をつなぐことが喫緊である局面ではEBM が中心的課題となります。一方、NBM とはNarrative-Based Medicine の略で「物語と対話による医療」を意味します。“その人”に寄り添った支援と回復のストーリーをどう描いて実践していくか、チームの力が問われます。的確な医療とその人らしさを両立させると同時に、時系列の進行とともにEBM と NBM の比重も変わります。

教科書にも載っていない、一般的な正解のない課題に向けて、学生たちはチームで調べものをしたり、議論したりしながら、最適と思われる「チーム医療」の形をつくりあげていきました。
症例作成を担当した教官は決勝の発表を聞き、「患者さんに関われる期間には限界があり、今回は半年間の設定にしました。患者さんの生活はその後も続くのですが、発表ではその点にも注意が及んでいて、ボランティアへのバトンタッチの仕方について考えたり、感染症対策のコミュニティづくりまで設計したりと、一人をみながら全体にも目を配るきめ細かさがありました」
「プレゼンの創意工夫も重要な評価軸。どのチームも動画を駆使するなど、よく工夫されていました。発表のインパクトだけではなく、医学的な妥当性も確保されていて期待以上の内容でした」と振り返っていました。

「よっ友」づくりは「チーム医療」の第一歩

演習の成果の一つとして「他学科に『よっ友』が増えた」という学生の感想を耳にします。「よっ友」とはすれ違い様に「よっ!」と声を掛け合える友達。医療現場では毎日が「チーム医療」。多忙な現場ではカンファレンスの場だけでなく、患者さんの情報を交換することは日常的にみられる光景です。つまり、専門職同士の信頼関係をつくることは「チーム医療」の土台。「よっ友」づくりは、「チーム医療」の第一歩と言えるでしょう。

例年、ハイレベルなプレゼンを展開する最終日

審査結果


最終日の決勝では前日の予選を勝ち抜いた6チームのプレゼンテーションが行われました。持ち時間は昨年までの15分から拡大され、今年度は各20分となりました。午前中いっぱいかけて6チームの発表と質疑応答が滞りなく終了。どのチームも動画や寸劇を取り入れるなど、効果的に伝えるための工夫が凝らされていました。
集計の結果、最優秀賞はD2チームに、優秀賞はA2 チームに決まりました。


決勝進出チームと審査結果

  最優秀賞
D2チーム

  優秀賞
A2チーム

<決勝進出チーム>
A2、B3、C1、D2、E5、F3チーム

最優秀賞受賞 チームインタビュー

全員が同じ目標を共有したことで「チーム」が動き出した

D2 チームは、救急救命士、臨床工学技士、看護師、保健師、理学療法士という構成で、[ケース③]の症例に取り組みました。目を引いたのがプレゼンの演出。発表が始まると、登壇した学生たちがマイクを持って一斉に舞台を降り、臨場感ある映像に切り替わるという意表を突く展開に。説明・解説は座席サイドから行われ、発表は壇上からという固定観念をくつがえすスタイルでした。

「震災発生から救急隊が活動する様子を伝えるには動画が一番と考えました」とメンバーの一人。リーダーを務めた学生も「急性期における救急隊員の動きと、フェイズが進展するにつれて関与するコ・メディカルが増えていくことを見せたいと考えました。さらに、災害が起こってから準備したのでは遅い。災害医療は普段のあり方が重要だと訴えたかった」と、凝った演出も発表の本質を伝えるために必要な手法であることを語ってくれました。

チーム結成当初は、自分たちの専門性を持ち寄るような関わり方で、「チーム医療」にはなっていませんでした。チューター役の教官から「誰のためのチーム医療かを考え、共通の目標を持つ」ことを促されたことで議論が深まり、「仮説住宅にどんな状態で患者さんに戻ってもらうか。どんな生活をしてほしいのか」というロードマップが共有されたことで「チーム」が動き出しました。例えば、看護師は救急救命士から引き継いだ患者さんをどういう状態で他職種に渡すのか、退院に向けて保健師と何を打ち合わせするべきか、全員が「チーム医療」の指針を持って進めていくことができました。「皆が力を合わせるようになり、日を重ねるごとに楽しそうに取り組んでいました。」とチューターの教官。メンバー全員も「演習を楽しめた」とこの点も全員一致です。

以下はメンバーの感想です。

  「全体のつながりのなかで、リハビリを捉える視点ができました。退院後の生活環境を整えるため保健師さんや診療情報管理士と社会保険の利用について打ち合わせすることも自分の仕事だとわかりました」
(高度理学療法学科)
  「臨床工学技士は手術室にて存在意義があると思っていましたので、最初は戸惑いました。しかし災害時という特殊な状況でも、臨床工学技士の知見を活かして介入できることが多々あると感じました」
(高度臨床工学学科)
  「救急救命士や看護師から情報があってはじめて仕事ができるのが保健師。連携の大切を痛感しました。プレゼンを通じて人前で話せるようになった点も成長できた点です。保健師に欠かせない素養ですから」
(高度看護保健学科)
  「議論を通じて、意見を言うだけではなく根拠がないと理解が得られないことを学びました。医療現場ではインフォームドコンセントが大切。現場に出て活かしていきたいです」
(救急救命学科)
  「今までも意識していたことですが、患者さんの立場にたち他職種と目標設定する重要性を一層理解しました。看護師としてよりもチーム医療として患者さんを見ることができるようになりました」
(実践看護学科Ⅰ)

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