歯科衛生士になるためのルートはいくつかありますが、中でも一般的なのは専門学校に通うルートです。しかし、「歯科衛生士の専門学校はきつい」という噂を聞いて、入学をためらっている方もいるのではないでしょうか?
本記事では歯科衛生士になるためのルートや専門学校に通うメリット、学費などをまとめたのち、専門学校がきついと言われる理由とその対策までを解説します。歯科衛生士の専門学校に通いたいと考えている方、入学をためらっている方はぜひご覧ください。
歯科衛生士になるには?
歯科衛生士になるためには文部科学大臣指定の歯科衛生士学校、または都道府県知事指定の歯科衛生士養成所を卒業し、歯科衛生士国家試験を受験して合格しなければなりません。
学校や養成所に通う期間は2〜4年です。その間に歯科衛生士として必要な知識や技能を習得します。
歯科衛生士専門学校と大学との違い
歯科衛生士を目指せる養成所には専門学校と大学があります。2つの養成所の違いは以下のとおりです。
専門学校 | 大学 | |
---|---|---|
学費 | 300万~400万 | 500万~600万円 |
修学期間 | 3年 | 4年 |
メリット | ・専門的な教育を受けられる ・実習が充実している ・早期に就職できる | ・一般教養を身につけられる ・さまざまな分野の勉強ができる ・将来の選択肢が広がる |
専門学校は特定の分野に特化した学習ができる養成所です。歯科衛生士の専門学校であれば、歯科衛生士に必要な知識や技能を大学よりも短い期間で身につけることができます。実習をはじめとした実践的なカリキュラムが多い点も特徴です。
大学は修学期間が長い分、分野を超えた勉強ができ、幅広い知識や技能が身につきます。このため歯科衛生士に限らず将来の選択肢が広がるのが特徴です。
どちらも異なるメリットがありますが、「歯科衛生士になりたい」という強い思いがあるのならば、より特化した教育を受けられる専門学校がおすすめです。
歯科衛生士の専門学校に通うメリット
本章では歯科衛生士の専門学校に通うメリットをさらに詳しく解説します。
短期間で資格取得が可能
歯科衛生士の国家試験を受けるためには指定の養成所を卒業しなければなりません。専門学校は修学期間が短い分、国家試験を最短で受けることができます。また、資格取得を目標としたカリキュラムやそのための支援制度が充実しているので、短期間で効率的に資格の取得を目指せます。
実践的な教育
専門学校は座学だけではなく、実技や実習などのカリキュラムにも力を入れている傾向にあります。実践的な教育を受けられるので知識に加えて技術・技能もしっかりと身につき、即戦力レベルの人材へと成長できます。
少人数できめ細やかな指導
専門学校は少人数制を採用しているケースが多いです。このため、学生1人ひとりに対してきめ細やかな指導・サポートがおこなわれます。疑問に感じたことを質問しやすく、授業内容をしっかりと理解することができるでしょう。
国家試験対策が充実
歯科衛生士になるためには国家試験への合格が必須です。専門学校では必要な知識や技能の習得に向けた指導と併せて、徹底した国家試験対策をおこなっているケースが多く、資格取得を目指しやすい環境といえます。
就職サポートが充実
試験対策と併せて就職サポートが充実している点も専門学校のメリットです。学校によっては入学時点から就職活動の準備が始まり、早期から個別面談をはじめとしたマンツーマンの就職指導を受けられます。また教員に実務経験者が多いことから、講義の際に就職に関するアドバイスをもらえることもあるでしょう。
同じ目標を持つ仲間
皆が同じ目標を持っていることから、互いに切磋琢磨し、励まし合いながら学べるのも専門学校の大きなメリットです。友人であり、「仲間」とも呼べる存在に出会うことができます。
社会人でも通えるコース
養成所によっては夜間などの社会人でも通えるコースを用意していることがあります。仕事をしていると日中にまとまった時間を作ることができませんが、夜間のコースであれば仕事が終わったあとに通うことができ、社会人として働いている方でも歯科衛生士を目指せます。
歯科衛生士専門学校は何年制?
「専門学校と大学との違い」にも記載したとおり、一般的に歯科衛生士の専門学校は3年制となっています。
では、3年間でどのような学習をするのでしょうか?以下、3年間の学習の流れや年次ごとのカリキュラムの例をまとめましたので参考にしてください。
3年間の学習の流れ
歯科衛生士の専門学校では、1年次にまず基礎分野の学習や基本的な器具の扱い方を学びます。続く2年次で専門科目の学習や実践練習、見学実習が始まります。最終年次にあたる3年次はほとんど臨床実習と国家試験対策に時間を費やすことになります。
1年次
- 基礎科目(解剖学、生理学、情報科学、基礎科学など)の学習
- 心理学、英語の学習
- 文章能力開発
- 歯科衛生士の役割や倫理の学習
- 基本的な器具の扱い方の実習
2年次
- 専門科目(歯科衛生士概論、臨床歯科医学、歯科予防処置論、歯科診療補助論など)の学習
- 相互実習(学生同士での実践練習)
- 学外での見学実習
3年次
- 臨地実習・臨床実習(歯科医院や病院での実習)
- 総合的な学習
- 国家試験対策
取得できる資格
歯科衛生士(国家資格)
歯科衛生士の専門学校は、卒業することで歯科衛生士の国家試験を受験する資格を得ることができます。この国家試験に挑み合格することで、歯科衛生士として働くことができるようになります。
医療専門士
専門学校を卒業すると、「専門士」と呼ばれる称号も付与されます。専門士は定められたカリキュラムをこなし、指定の専門学校を卒業した証明になる称号であり、取得することで大学への編入学ができるようになります。
歯科衛生士専門学校の学費
歯科衛生士を目指して専門学校に通うのであれば、学費も気になるところです。
「専門学校と大学との違い」にも記載したとおり、歯科衛生士の専門学校に通った場合の学費の総額は一般的に300~400万円と言われています。
しかしこの総額はあくまで目安であり、学校によって差があります。例えば医校・医専歯科衛生学科 昼間部の場合、学費は約325〜337万円です。一般的な大学の学費が500~600万円なので、約150〜250万円ほど少ない負担で通うことができます。
参考:募集学科・出願資格・学費
学費の内訳
学費の内訳もチェックしておきましょう。
医校・医専 歯科衛生学科 昼間部を例に挙げると、学費の内訳は以下のとおりです。
- 授業料
- 教育充実費
- 施設・設備維持費
- 実習着・ユニフォーム代
- 学外実習費
- 教材費・教科書代
- 卒業生会会費・卒業アルバム代
授業料と入学金以外の費用に関しては学校によって異なるため、気になる学校がある場合は事前に内訳を調べておくことをおすすめします。
学費を抑える方法
専門学校は大学より学費の負担が少ないものの、それでも大きな金額には違いありません。支払いが大変、あるいは難しいと感じる方もいることでしょう。
学費の負担を減らしたい場合は奨学金制度の利用を検討しましょう。
例えばもっともポピュラーな「日本学生支援機構奨学金制度」は、在学中は無利子で借りることができ、かつ返還は卒業後7ヵ月後から始まるため比較的利用しやすい制度です。また、一定の要件を満たす場合は入学金免除・授業料減免の措置を受けられます。
東京都をはじめとした都道府県によっては「修学資金制度」を設けている場合もあり、こちらは卒業後、指定の施設に一定期間勤務することで、在学中に借りたお金の返還が免除されます。
以上のように奨学金制度はいくつも種類があり、利用するための条件や借りられる金額、返還のタイミングなどが異なります。よく調べたうえでご自身の環境に合わせてご利用ください。
歯科衛生士の専門学校はきついのか?
本章では歯科衛生士の専門学校がきついと言われる理由と対策、そして3年間の学校生活を乗り越えるコツを解説します。
専門学校に通い続けるのは大変ですが、歯科衛生士を目指す方にとってよい環境であることも事実です。本章を参考にして後悔のない選択をしましょう。
きついと感じる理由と対策
学習内容が多い
専門学校に通うことをきついと感じる理由の1つに、学習内容が多いことが挙げられます。
歯科衛生士になるためには国家試験に合格しなければなりませんが、国家試験では以下のような科目を受験します。
- 人体(歯・口腔を除く)の構造と機能
- 歯・口腔の構造と機能
- 疾病の成り立ちおよび回復過程の促進
- 歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み
- 歯科衛生士概論
- 臨床歯科医学
- 歯科予防処置論
- 歯科保健指導論および歯科診療補助論
加えて専門学校では心理学や英語、文章能力開発などの授業もカリキュラムに含まれています。
また、前述のとおり歯科衛生士の専門学校の修学期間は3年が多いですが、実際には国家試験対策にも時間があてられているので、その分、学習のための期間は短くなります。短期間でたくさんのことを学ばなければならないことから、専門学校がきついと感じる方が多いです。
対策方法
学習する内容を減らすことはできないので、きちんとスケジュール管理をして負担を軽減することが大切です。効率的に時間を使って学習を進めることで心に余裕ができます。
また、予習・復習で授業外の時間に自らの理解力を高めておくことも心の余裕につながります。
実習が多い
専門学校は座学だけではなく実習も多い傾向にあります。実践的な技能が身につくというメリットがある一方で、実習ならではの大変さを感じる瞬間も多いでしょう。学んだことを実際におこなおうとしたらうまくいかず、自信をなくす方も少なくありません。
スケジュール面の負担はもちろん、心の面で実習の多さが負担になるという方が、専門学校がきついと感じやすいです。
対策方法
実習などの実技は、はじめは誰しもうまくいかないものです。また上達するまでのスピードも人それぞれ違います。それをふまえて焦りすぎず、コツコツと取り組んで上達を目指すことが大切です。それでも不安がある場合は仲間や教員、先輩に相談することでアドバイスや励ましの言葉をもらえるはずです。
国家試験対策が必要
最終目標である国家試験の合格に向けた試験対策も、専門学校がきついと感じる理由の1つです。専門学校での試験対策は3年次から始まりますが、合格を目指すなら1年次からコツコツ努力を重ねていきたいところです。しかし、日々の学習と並行して試験対策をおこなっていると、自由な時間をなかなか作れずストレスを感じがちです。結果として、専門学校に通うことを「きつい」と感じるようになります。
対策方法
試験対策は重要ですが、適度にストレス発散をしないと勉強が手につかず飲み込みも悪くなります。しっかりとスケジュール管理をして、趣味の時間を作るようにしましょう。同じ学校の仲間と遊ぶことで、充実した時間を過ごしつつ勉強関係の悩みを相談することも効果的です。
乗り越えるコツ
以下は、歯科衛生士の専門学校をきついと思った時に、その気持ちを乗り越えるためのコツとなります。無理をする前に実践してみましょう。
目標を明確にする
きついと感じた時は、まず目標を明確にしましょう。歯科衛生士を目指すのであれば国家試験に合格しなければなりません。そのために今の勉強が必要だと考えれば、やる気を取り戻せるはずです。
仲間と協力する
勉強や実技で困った時は、仲間と協力して乗り越えましょう。専門学校は同じ夢に向かって努力している人が多いので、互いに切磋琢磨することができます。同じ悩みを持つ人や、反対に悩みの解消方法を知っている人を探してみましょう。
趣味や息抜きの時間を作る
適度に趣味や息抜きの時間を作り、ストレスを発散することも心がけましょう。ストレスを溜め込むと心身に大きな影響が出ます。1日の決まった時間には趣味や息抜きをするなど、あらかじめスケジュールを立てておくと勉強に支障が出ないので安心です。
教員や先輩に相談する
授業についていけない、実習がうまくいかないなどの悩みは、教員や先輩に相談することで解決できる可能性があります。同じ道を通っている可能性が高いため、どうすれば授業についていけるようになるか、スムーズに実習をこなせるかなど、経験に基づいた適切なアドバイスをもらえるでしょう。
歯科衛生士専門学校の選び方
最後に、歯科衛生士の専門学校の選び方を解説します。
立地
立地は特に重視したい項目の1つです。専門学校は忙しいので、勉強に集中するために、できるだけアクセスが良く通いやすい立地にある学校が望ましいです。場合によっては引越し・一人暮らしも検討しましょう。
設備・施設
設備や施設が充実しているかもチェックしておくことをおすすめします。最新設備がある学校や施設が充実している学校であれば、現場に近い環境でスムーズに学習することができます。校舎の位置関係、教室の広さ、トイレなど日常的に使う場所も見学しておきましょう。
カリキュラム
専門学校を選ぶ基準としてカリキュラムは外せません。大まかな内容は同じでも力を入れている科目や選択科目には違いがあります。自分が学びたい内容、がんばって学習したい内容を学べるカリキュラムの学校かをチェックします。
実習の充実度
歯科衛生士のような技能が求められる職業は、専門学校に在学している間にできるだけ実習をこなし、技能を高めておくことが理想です。そのような観点で見ると、実習の多さや充実度も大事な要素といえます。
国家試験の合格率
歯科衛生士になるには国家試験に合格しなければならないため、国家試験の合格率も重要です。合格率が高い学校は試験対策やサポートがしっかりしていると考えられます。
就職率
国家試験に合格するだけではゴールとはいえず、最終的な目標は就職です。就職率もチェックし、卒業生が問題なく就職できているかどうかを確かめましょう。就職先の施設なども併せてチェックしておきたいところです。
学費・奨学金制度
専門学校に通うには決して安くないお金がかかるからこそ、費用面もきちんとチェックしておきましょう。支払いができる程度の学費かどうかに加え、利用できる奨学金制度も調べておくと、費用負担を減らせる可能性があります。
「認可校」と「無認可校」
学校としての認可を受けている「認可校」と、認可を受けていない「無認可校」では待遇に差があります。無認可校は学割が効かない、国の奨学金制度を利用できないなどのデメリットがあるため、「専門学校」の名前を持つ認可校を選ぶことをおすすめします。
まとめ
本記事では歯科衛生士になるためのルートや専門学校に通うメリット、学費、専門学校がきついと言われる理由とその対策、専門学校の選び方などを解説しました。
短期間で多くのことを学ばなければならない専門学校は、日々が忙しくなりがちで「きつい」と感じる方が多いですが、きちんとスケジュール管理をしたり、仲間と励ましあったりすることで乗り越えることができるはずです。
また、歯科衛生士になるのに特化した学習ができること、そのための充実した環境が提供されることなどは専門学校ならではのメリットです。本気で歯科衛生士になりたい方にこそ、専門学校は向いています。
歯科衛生士を目指している方は、ぜひ専門学校への入学を検討してみてください。
歯科衛生士専門学校に関するよくある質問
学費の分納は可能ですか?
回答学校によっては学費の分納が可能な場合がありますが、一般的には全額一括納入の場合が多いです。HPには記載がなくとも、事情を説明すれば柔軟に対応してくれることもあるので、入学の意思があることを伝えつつ学校の入学担当者に相談してみましょう。※入学担当者以外に問い合わせても事務的に断られる可能性が高いので注意。
具体的にどのようなことを学びますか?
歯科衛生士学科では、「口腔解剖学」「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」など基礎医学から基礎技術、保育園や小学校での臨地実習や一般歯科診療所での臨床実習などがあるのが一般的です。また多くの学校では国家試験の対策もカリキュラムに取り入れられています。
入試の倍率はどのくらいですか?
全国の平均的な倍率は公表されていませんが、専門学校の特性上、比較的競争率は低めです。
化学が苦手でも大丈夫ですか?
化学の苦手な学生でも、一般的には基礎から丁寧に指導されるため心配する必要はありません。ただし、歯科衛生士という仕事上、化学の知識や考え方を身につける必要があるため、学校に入学前に国家試験のテキストを読んでみて挑戦できるかどうか事前に確かめてみるのもおすすめです。
授業時間はどのくらいですか?
午前部と夜間部があり、それぞれ異なる授業時間設定となっています。一般的な午前部は9時から16時、夜間部は18時から21時などが多いです。学校によっては土曜日に開校している場合もあります。
実習はどのような場所で行われますか?
主に学内の実習室や提携する歯科医院で実践的な実習が行われます。後期になると学校によっては保育園や小学校や、一般歯科診療所での臨床実習などもあります。
入学前に準備しておくべきことはありますか?
とくに準備が必要なことはありません。学校生活は毎日があっという間に過ぎ、勉強以外のことをする余裕があまりないかもしれません。そのため引越しやアルバイトなど、生活に関わることは入学前になるべく整えておき、入学後は勉強に集中できるようにしておくことがおすすめです。また、余裕があれば歯科衛生士のテキストの予習を始め、学校ではわからない部分の確認程度に進めておくと学習効率が上がります。
社会人経験者でも授業についていけますか?
社会人経験者も十分に学習可能です。むしろ、実務経験が学習に活かされることもあります。
手先が不器用でも大丈夫ですか?
手先の器用さは徐々に身につきます。初心者でも丁寧な指導により上達できます。
アルバイトは可能ですか?
学業に支障がない範囲で、アルバイトは可能です。学校の時間を除くと、概ね平日の夜か、土日がアルバイト可能な時間帯になります。また、とくに後期は国家試験の勉強でアルバイトをする時間がないことが想定されます。そのため学業を最優先にすることを念頭にアルバイトの職種やシフトを考えて選びましょう。