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コロナが収束しても今後ないとは限らない。この経験を次世代に伝えたい。

救急・臨床工学分野
髙田 豪士
救急救命士
堺市消防局 勤務
2014年卒業

―ご勤務先はどんな施設ですか。

私が所属する堺市消防局救急部救急ワークステーションは、堺市立総合医療センターに併設しており、119番通報内容から重症と思われる事案に対して、医師や看護師が同乗出場する特別救急隊を運用しています。また、消防局の救急業務に携わる職員に対する教育指導を担っています。

そのため、一般の消防署勤務の救急隊員とは異なる業務に携わっているところで、具体的には、消防が行う救急業務を医学的観点からその質を保証するというメディカルコントロール体制のコア業務である、救急活動の事後検証に関する事務や症例検討会の運営などです。消防局全救急隊の現場活動を見て学ぶことができ、自身の救急救命士としての資質向上に大変有意義だと感じています。

最近では、日本臨床救急医学会からの依頼により、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う心肺停止傷病者への対応要領の動画作成に協力したところです。私自身は画面上には出ていませんが、本動画はYouTubeにもアップされていて、2000回以上(2020.10.1現在)再生されています。この部署にいるからできる仕事で、業務負担は増えてもやりがいを感じています。

―コロナ禍の影響はいかがでしたか。

堺市でも、保健所の移送業務に協力するという形で、り患された感染患者の搬送に従事しました。

未知のウイルス感染症に対し、我々救急隊員はタイベックという全身防護服、N95マスク、ゴーグルを装着して感染防止を図りました。顔にマスクとゴーグルの跡形は残りますし、暑い真夏の時期は体力的な負担が大きく、自分自身への感染リスクと相まって精神的にも大変でしたが(原動力は)使命感だけで乗り越えました。

―そんな中でもコロナ禍を経験して良かったことはありますか。

個人防護服や消毒などといった感染防止に対する認識をあらためて深めることができました。コロナが収束しても、いつ新たな感染症が発生し拡大するかわかりません。正しく備えることで感染リスクを抑えられるということを経験できたのは、今後の貴重な財産だと捉えています。

母校を卒業し、救急車に乗り始めた頃は、タイベックを着用する機会なんてまずないだろうと思っていましたが、本当に何が起きるかわかりません。

今回のコロナ禍を経験した一救急救命士として、この経験を次世代に伝え、今後の組織体制の充実に貢献できるよう努めていきたいです。

―救急救命士のやりがいを教えてください。

心肺停止状態で搬送した傷病者が社会復帰され、勤務する消防署までお礼を言いにきてくださったことがありました。頑張ってきて良かったと思う瞬間ですが、一方で我々救急救命士は、傷病者の快復過程に立ち会うわけではないので、直接感謝の意を伝えられる機会は少ない職種かもしれません。それでも、止まっていた心拍を現場で再開させることができたり、あと数分遅れればどうなっていたかわからない傷病者を救えたりなどの経験は、何にも代え難いものがあります。

救急救命士の大切な役割は適切な搬送先の選定です。病院前救護のプロとして傷病者の身体に何が起きているのかを迅速に判断する力が求められます。問題は脳なのか、心臓なのか、知識だけではなく、自らの五感を研ぎ澄ませて判断しなければなりません。わずかな遅れが命に直結するわけですから、毎回真剣勝負です。

だからこそ、医療従事者としての自身の腕を磨いていくのはもちろん、今の部署特有の業務である組織全体の底上げにも積極的に携わっていくことに意欲を持っています。

組織力向上のためのマネジメント能力を身につけていきたいと考えていて、そういった観点から、今回の新型コロナウイルス感染症に対する組織対応はいい勉強になっています。