未来の医療人を育てる卒業生たち

2025.12.22

未来の医療人を育てる卒業生たち

  • 平野 美乃利

    高度看護学科 教官

    高度看護学科/2020年卒業

  • 内田 雅之

    高度理学療法学科 教官

    高度理学療法学科/2012年卒業

  • 中野 裕太

    救急救命学科 教官

    救急救命学科/2011年卒業

平野 美乃利

高度看護学科 教官

高度看護学科/2020年卒業

卒業後は都内の総合病院で5年間勤め、2025年より本学教官にキャリアチェンジ。

臨床経験を重ね、今は母校に戻って教鞭をとっていますが、母校に戻るきっかけにもなった学生時代に母校で印象に残っていることはありましたか?

本当にたくさんありますが、一つ選ぶとするならば、国際看護演習(サンフランシスコ・ロサンゼルス)が思い出深いです。日本とは異なる社会情勢、文化的背景、医療の在り方や仕組み、保険システムの違いを学内で学び、実際にアメリカの病院を見学したり、専門学校や大学での講義を受けたり、通常ではできない貴重な経験でした。 カリフォルニア大学(UCLA)では「看護の適応モデル」を作成した看護理論家のカリスタ・ロイ先生の講義を直接受けることができました。言葉の壁を越えて、その小柄なお身体から溢れ出る情熱を肌で感じました。ロイ先生のような情熱を持って、私も学生と向き合いたいと思います。

学生時代に教官から受けた言葉や指導で、現在のご自身に影響を与えたものは何ですか?

成人の実習に行った時、自分では患者さんと良好な関係性が構築できていると思っていました。しかし教官から「患者さんに依存している、距離感を考えましょう」と指導を受けました。実習が終わった後、振り返りをしてもそれがよくわからないまま次の実習に進むことがありました。良かれと思った言葉や行動に自信が持てなくなり、自分らしさを見失いかけそうでとても苦しい経験でした。そのことを担当教官に相談した時、教官がかけてくれた言葉です。 「患者さんを一生懸命想う気持ちに間違いなんてありません。自分が想うようにまずはやってみてください。もしあなたが本当に間違っていたら、その時は私がちゃんと伝えますから。そのために私はいます。自分を信じて!」 あの時先生から頂いた言葉により救われた気持ち、先生が側に居てくれる心強さは今も鮮明に覚えています。実習も充実し、看護師にまた一歩晴れやかな気持ちで近づけたエピソードです。

現在の教官という仕事に対してのやりがいは何ですか?

私は看護師という職業が大好きです。看護師になってよかったと胸を張って言えます。そしてその夢をかなえてくれたのが『首都医校』でした。今も学内の至るところで学生時代の思い出が蘇ってきます。そこで今まさに同じ夢に向かって頑張っている学生の力になれるよう、さらに自己研鑽しなければいけないという気持ちになります。 看護と患者には相互作用があるといいますが、教員と学生もまたお互いを思いやり、それぞれの目標の中で切磋琢磨していく相互作用の関係性があるのだと日々感じています。私も学生との関わりの中で成長させてもらっていると感じています。


内田 雅之

高度理学療法学科 教官

高度理学療法学科/2012年卒業

卒業後は臨床経験を重ね、2020年より本学教官にキャリアチェンジ。

臨床経験を重ね、今は母校に戻って教鞭をとっていますが、母校に戻るきっかけにもなった学生時代に母校で印象に残っていることはありましたか?

課外授業として受講した「手話専科」が特に印象に残っています。この講座では、聾者の講師による全編手話の授業を通じて、言語や文化の違いを体感的に学ぶことができました。それまで漠然と抱いていた障害者へのイメージが大きく変わり、言語や文化が異なる相手に対しても、たどたどしくても意思疎通を図ろうとする姿勢の大切さを実感しました。実際に聾の患者さんに出会った際には、手話での会話がスムーズにできたわけではありませんが、臆せず自分からコミュニケーションを試みることで、その姿勢が相手にも伝わり、言葉以上に良い関係を築けたと感じています。 また、「チーム医療」の授業では、他学科の学生と模擬症例に取り組み、医療チームとしての対応を話し合いました。専門性や価値観の違いから議論が難航する場面もありましたが、対話を重ねることで一つの結論に至り、達成感とともに多職種連携の意義や話し合いの重要性を学ぶことができました。

学生時代に教官から受けた言葉や指導で、現在のご自身に影響を与えたものは何ですか?

当時の私は、自分の学びを最優先に考え、一匹狼のような立ち振る舞いをしていました。そんな私に担任の先生が「あなたには、人にわかりやすく伝える力がある」「国家試験全員合格という大きな目標に向かって、リーダーとしてその力を発揮し奔走することで、一人では得られない達成感を味わってほしい」と声をかけてくださり、集団の中での役割や達成感の価値に気づくきっかけとなりました。 さらに、「理学療法士は、自分のためではなく、誰かのために力を尽くす仕事だよ」と語ってくださり、特に「家族ではない他人のために、自然と力を注げることこそ、この仕事で最も大切な力だよ」という言葉は、今でも私の仕事観の根幹を支えています。結果としてクラス全員が国家試験に合格し、仲間と喜びを分かち合えたことは、今でも忘れられない大きな達成感として心に残っています。

現在の教官という仕事に対してのやりがいは何ですか?

私は臨床現場で新人教育や若手指導に携わる中で教育の魅力を感じ、教員の道を選びました。実際に教員となってみると、現場の後輩のように自ら指導を求める姿勢とは異なり、モチベーションが上がらない学生や、思いと行動が一致しない学生も多くいました。そんな中でも、学生時代に教わった「他者のために力を尽くす姿勢」という教訓を胸に、粘り強く、そして支持的に学生と関わることで、少しずつ変化していく姿に数多く出会うことができました。 特に、学生が「もっと知りたい」「学ぶことが楽しい」と感じ始め、点と点だった知識がつながっていく喜びを実感する瞬間に立ち会えることは、教育に携わる者として大きな喜びです。入学時と卒業時では、顔つきも話す内容も大きく成長し、羽ばたいていく姿を見られることは、教員としてのやりがいのひとつだと感じています。卒業後も学校に顔を出してくれる学生が多く、社会人として立派に活躍している様子に触れられることも、教育の魅力のひとつです。高校時代まで勉強が苦手だった学生が、人を支える仕事に就くまで導けることは、社会的にも意義深いと感じています。


中野 裕太

救急救命学科 教官

救急救命学科/2011年卒業

卒業後は地元の愛媛県の消防局で勤め、2021年より本学教官にキャリアチェンジ。

夢であった地元での活躍をかなえ、今は母校に戻って教鞭をとっていますが、学生時代の印象に残っていることはありましたか?

学生時代を振り返って、覚えているのは現役の救急医の方の授業です。お忙しい中、講義を担当してくださり、私たちにお話しいただく内容は難しく、その時は全てを理解することは困難でした。しかし、就職してから病態理解に悩んだ際、いつもその先生の授業ノートを見返せばそこに知りたい答えがありました。私たちの将来を見据えた授業をしてくださっていたんだと、卒業してから感じました。

学生時代に先生から受けた言葉や指導で、現在のご自身に影響を与えたものは何ですか?

学生時代、救急現場を模したシミュレーション実習において、毎日実技を繰り返す中で沢山の失敗をしていました。失敗することが当たり前で、失敗に慣れてきた頃、担当教官に「自身の無知や未熟さで人が亡くなったと思って練習しなさい。次に同じ失敗をしないように。」と言われ、青天の霹靂であったことが心に残っています。また、その恩師と今現在、一緒に同僚として学生指導に携わっていることが不思議な気持ちです。

現在の教官という仕事に対してのやりがいは何ですか?

教員という職業は、学生の夢をかなえる仕事です。そのために、私たち教員は毎日汗をかいて努力し続けておりますし、その努力は学生に伝わります。だからこそ、卒業時に感謝されます。シンプルですが、頑張った成果が目に見えるところが魅力だと思います。 また、消防吏員として勤務している際には、悩み苦しむ新人を沢山みてきました。その悩みの種を学校で解決してあげてから入職させることを心がけています。教員のどんな経験談も学生にとっては新鮮でリアルなものです。自身が経験してきたことが、学生たちのバイブルとなって巣立っていってくれるところも大きな魅力だと感じています。