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先輩・後輩で同じ病院に就職!理学療法士にとって広い意味での「観察力」が、すべての土台に

リハビリ分野

【特集】私が大切にする「○○力」

今回は先輩・後輩で同じ病院勤務する卒業生2名にインタビューを行いました。お2人が大切にする「観察力」について語ってもらいました。

<卒業生>
総合東京病院勤務
茂木弘樹さん(上写真:右)、西村潤也さん(上写真:左)

――「観察力」にはどのような意図が込められていますか?

茂木理学療法士は「この患者さんを動けるようにしたい」という気持ちを常に持っているわけですが、それには危険な一面があります。動かしたいというこちらの意志が前面に出て、下手をすると自分の考えだけでリハビリを進めてしまうからです。それを防ぐのが「観察力」です。患者さんの表情や会話での反応にしっかりと目を向ける。そうした態度によって、相手中心の視点に戻れるのです。

西村身体的な面もそうですが、患者さんの精神面、心の部分も観察しようと努めることが重要だと思います。茂木さんが言われた患者さんの観察を通じて、この人は今、何を考えておられるのか、何を求めておられるのか、表面化しないことを察知できる観察力を発揮していきたいと考えています。そのためには、患者さんの小さな変化にも気を配ることです。

――「観察力」とは平易な言葉ですが、医療人の大切な資質ですね?

茂木相手を観察することによって「患者さんのために」という強すぎる責任感から一歩引いた冷静さを取り戻す。つまり、自己観察に行き着くのだと思います。また、「チーム医療」も結局のところ、観察力の延長線上にあるものだと思います。看護師や介護職など共通の患者さんと接している他職種の動きにも目を向け、情報を収集してリハビリに生かしていくことも大切な仕事ですから。

西村患者さんの精神面も含めて観察しよう、通常なら他者が気づけないことに気づいてあげようという態度で接していけば、信頼関係にもつながります。信頼関係を築くことでリハビリがずっとやりやすくなります。

――今、お仕事で特に気をつけていることは何ですか?

茂木今は急性期の患者さんを担当しています。急性期で何より重要なのはリスク管理です。まだ安定性がありませんので、病状を悪化させないことが前提になります。無理なリハビリで症状を悪化させては元も子もありません。ここでも、少しの変化も見逃さないという観察力が大事になってきます。それと先ほども言いましたが、他職種との連携も重要です。看護師などの他職種の方から患者さんの様子、たとえば起床時に目まいがなかったかなど、色々な情報を集めておくことにも気をつけています。

西村私は回復期を担当しています。急性期に比べて安定した状態にあり、在宅復帰や施設への入所を考慮したリハビリを行う時期です。特に意識しているのが、身体的な機能だけではなく生活面への対応です。だからご家族の状況など、患者さん個々の生活の背景も知る必要が出てきます。ただ身体が良くなったから退院するということではなく、退院後の環境が整った状況で病院を出ていただきたいと思っています。

――学校の先輩後輩が同じ職場にいることをどう感じていますか?

茂木やはり、何かと協力しやすいですね。これからも後輩に入ってきてほしいですし、私自身、就職説明会のために母校へ出向くという仕事もさせていただきました。実は母校出身者は、ここだけではなく他の部署にもいるんですよ。

西村職場に先輩がいるのは心強いですよ。同じ授業を受けるなど茂木さんのことは在学中から知っていますので、気軽に質問ができます。就職のときでも先生だけではなく、茂木さんからも生きた情報を教えていただきました。

――理学療法士という仕事のやりがいは何ですか?

茂木寝たきりだった人が自分の足で歩けるようになる。その場に立ち会えるのは、まさに感動的な瞬間。言葉では言い表せないですね。一緒にリハビリをしてきて本当に良かったと感じるときです。

西村回復期におりますと、退院後の診察で患者さんが顔を見せにきてくださることがあります。患者さんが日常を取り戻したことを実感でき、この仕事をしていて良かったなあと思います。

――理学療法士として、今後の目標は何ですか?

茂木これからもずっと患者さんを観ることができるよう、ときには自分の身体にも目を向けて仕事に取り組みたいですね。そのためには、目先の仕事に一杯一杯にならないように自分への「観察力」も持ちながら、末永く患者さんを支えていきたいです。

西村うちの病院は学会で賞を取る先輩がいるほど研究活動にも熱心です。私も臨床に加えて、今後は研究にも力を注いで学術面でも成長していきたいと思います。

※卒業生会報誌「i(アイ)」18号(2015年11月発刊)掲載記事