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実習生の受け入れなど地域との協働を軸に、障がい者の作業活動を支援。

リハビリ分野

辻 寛之さん
就労継続支援B型事業所 workwork ワクワク 所長
作業療法士
作業療法学科 2009年 卒業

起業して障がい者の就労を支援する作業療法士

――就労継続支援B型事業所※を開所されました。

脳卒中や交通事故などの後遺症による高次脳機能障がいを抱えた方や、精神障がい、発達障がいのある方などが、各種の作業活動および地域協働に取り組む施設です。スローガンは「主体的な活動は脳を元気にさせる。」で、利用者さんに対してこちらから活動内容を指示するのではなく、主体的に選んでもらうという支援を行っています。当所のように作業療法士が経営する事業所は全国的にもほぼないようですが、利用者さんがリハビリ的視点を持ちながら作業活動に従事できることは、我々ならではの強みといえます。また、B型事業所には「エ賃」と「地域協働」という2つの評価体系があり、私は後者を選択しています。

――地域協働では具体的にどんなことをされていますか。

最大の特色は作業療法学生を実習生として受け入れていることです。利用者さんが先生役を務め、例えば重度障がいの方が自身の受傷・発症の経緯や経過を実習生に説明します。利用者さんにとって自己理解も大切な作業活動であり、他者に伝えることは自分を知る上でとても有効な方法です。ほかには事業者との連携による和菓子や野菜の販売、幼稚園児を招いてスーパーボールすくいを楽しんでもらう地域交流。このようなコミュニケーション作業活動を実施しています。こうした活動には、「地域に開く」という意味合いも持たせています。利用者さんの大半が、見えない障がいと呼ばれる高次脳機能障がいを抱えた方です。障がいに対する社会的な理解が進んでおらず、その普及・啓発も兼ねてのことです。

――就労の支援という点はいかがでしょうか。

一般就労を望む方には、就労移行支援事業所につなぐことも、当所から目指してもらうこともできます。B型事業所は利用者さんが就労を目指すようになったとき、それを後押しする施設であるべきだと私は考えています。本人が一番望む形での就労支援を日々地域と向き合いながら取り組んでいます。最近、こんなことがありました。休職期間中に入院・回復期を経て当所から元の職場に戻ったという事例をつくったのです。休職者は本来、就労移行支援を利用します。役所からは復職支援のためにB型事業所を使う許可を出したことがないと渋られたのですが、実情を説明して何とか許可を得ました。―つ許されれば前例になります。この支援はこれからも拡大していきたいと思います。開所から1年が経過し(収録時)、これまでに数名の方が復職・就職を果たしてくれました。これ以上に嬉しいことはありません。

※ 一般企業への就職に不安や困難がある障がい者が就労訓練を行う福祉サービス事業。雇用契約は結ばれず、年齢、期間の上眼はない。

Profile

 
辻 寛之さん

就労継続支援B型事業所 workwork  ワクワク 所長
作業療法士
作業療法学科 2009年 卒業

卒業後、クリニックのデイケア、病院、訪問リハビリ勤務を経て、障がい者の社会復帰を支援するため、合同会社わくわく堂を設立し、同事業所を開所。心理職唯一の国家資格、公認心理師も取得している。