リハビリはリハビリ職だけでは成り立たない
- 加納 茉純さん
- 作業療法士
- 横浜旭中央総合病院 勤務
- 2015年卒業
チーム全体で患者さんの退院を支援する
作業療法士が患者さんの治療に取り組める背景には、医師の指示はもちろん、看護師の観察や薬品管理など、関連職種の働きがあります。患者さんの状態を共有しながら、自宅復帰に向けてどのような支援をしていくべきか、看護師と話し合いを持つことも日常的に行っています。看護師にとってもリハビリの状況を把握していないと退院後の生活のことがイメージできません。お互いの情報が必要なのです。医師、看護師以外にも同じリハビリ職である理学療法士、言語聴覚士とのやりとりもあり、このチームが患者さんの退院とその後の生活というテーマでつながっています。このように臨床現場では「チーム医療」は必須となっています。
情報交換という側面だけではありません。例えば特別な補助具を装着している患者さんなどは、看護師から手技やケアの方法を学ばせていただくこともあります。それぞれ職域は異なりますが、チームでつながることで、初めて患者さんの全人的な支援が可能になります。つまり、リハビリはリハビリ職だけでは成り立たないのです。
理学療法学科の先生からも学んだ学生時代
母校を選んだ理由は、4年間かけてしっかり学べることと、数多くの医療系学科があること。他学科の知識を学ぶ機会もあり、理学療法学科の先生から筋肉の動かし方や体の使い方などを理学療法学の視点から学習させていただいたこともありました。母校では、学科が異なってもお願いすれば先生は快く教えてくださいます。自分の専門を深めるのは当然ですが、他学科の知識は自らの引き出しを増やすことになりますので、これから医療を学ぼうとする人はその点も意識されるとよいのではないでしょうか。「チーム医療」の観点から言えば、臨床に入ってから関連職種の状況を意識しながら動くためにも、関連する医療職の役割を学習しておいてほしいと思います。
笑顔で退院していく患者さんを見られる仕事
現在の担当は急性期です。患者さんが自宅に戻り、その後も本人らしく生活できる治療をさせていただくことが私の務めです。以前担当していた回復期とは異なり、状態の悪い患者さんも多くおられ、なかには気分が落ち込んだり自暴自棄になったり、精神的にも参ってしまわれる方もいます。そのような患者さんに対して、何かできることを探し出し、楽しみを見いだしてあげられる関わりを大事にしています。できない動作ができるようになった。精神的に落ち込んでいた人が笑顔で退院していった。作業療法士はそうした患者さんの姿を見ることのできる仕事。私にとって、それは大きな喜びです。
※2021年度 首都医校 学校案内書 掲載記事